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毒吐姫と星の石

2015.11.30(21:00) 1576

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「ミミズクと夜の王」から少し後の物語。
本作でも前作でもそうですが、ラノベの割には挿絵が一切ありません。
なので世界観を視覚的に感じられるのはこの表紙のみという仕様。
どうも以前は作者自身のwebサイトにイラストも載せられていた様ですが、
というか探せば今でもwebサイトに掲載がされているかもですが、
残念ながら私の力量では見つけられなかったので悪しからず。
それでもpixivに投稿されているイラストでのミミズクやエルザ、
その他の登場人物のデザインに一定の方向性が見受けられるので、
それらの方々はもしかしたらその公式(?)イラストをご覧になったのかもですね。

というわけで「ミミズクと夜の王」の続編。
前作の記事と同じ様に当たり障りないところでお喋りしているだけですが、
お時間ございましたらお付き合いくださいませ。
それでは宜しければ続きからご覧ください。



ストーリー
レッドアークの隣国である占いの国ヴィオンに、
毒吐き姫と言う異名を付けられた王女、エルザがいた。
エルザは生まれてまもなく言葉という毒を吐き、
国を滅ぼす者であると予言され幼くして城下へと捨てられた。
しかし、それから十数年後。
エルザはレッドアークとの国境関係の交渉材料として再び王家に復縁させられた。
抵抗も虚しく災いを生むと言われた言葉を奪われ、
言無し姫としてレッドアークのクローディアスの元へと嫁がされることになるのだが…。

登場人物
エルザ
毒吐き姫。黒髪に赤い瞳をもつ少女。
ヴィオンの王女としてうまれたが予言により城下に捨てられる。
世話役の老人と暮らしていたが、亡くなってからはスリなどをして生活をしていた。
誰にでも対して強気な態度をとり、平気で思ったことをなんでも率直に言う。

クローディアス・ヴァイン・ヨールデルタ・レッドアーク
異形の王子。

ダンテス
レッドアークの王。

アン・デューク・マクバーレン
レッドアークの聖騎士。

オリエッタ・マクバーレン
アンディの妻。

真昼姫
本名はミミズク。


以上、例の如くwikipediaからの引用となります。
どうですか、この簡素過ぎる登場人物紹介。
殆どが前作「ミミズクと夜の王」の登場人物と同じなので、
wikipediaですらこんな淡泊な紹介ですよ、酷すぎる。
ていうかもっと紹介していい登場人物がいると思うんですけどね、
せめてジョゼフくらいは書いてあげても罰は当たらないと思うのに。

この物語は敢えて簡潔に説明するならなんでしょう。
「運命に捨てられた姫と運命に立ち向かう王子」でしょうか。
前作「ミミズクと夜の王」から数年後の物語。
新しいヒロインは、占いの国ヴィオンの捨てられた王女にして、
不条理な世界に対する憎悪をその身に宿し、
息をするかの様に他者を貶める言葉を紡ぐ”毒吐姫”エルザ。
彼女が国の策略に組み込まれ政治的に利用され、
レッドア-クのクローディアス王子へと輿入れしてくるところから物語は始まります。

彼女はそのキャラクター性が私の個人的嗜好とかなり合致していて、
読んでいる最中も非常に好ましく思っていました、ツンツンデレツンデレツンツン。
それは後述のクローディアスについても同様で、彼の成長もまた好ましいもの。
前作での、ミミズクと夜の王の在り方とは違う、
人間同士だからこその繋がり方、愛し方というものが感じられて、
そういう前作との味わいの違いも含めて大変引き込まれる内容でした。

そんな”毒吐姫”の相手役を務めるのは懐かしい顔。
生まれつき動かない四肢のせいで表舞台に立つ事すら出来ず、
夜の王の魔力で四肢の自由を得てから”異形の王子”と揶揄されるクローディアス。
前作でのミミズクとの短くも印象的な触れ合いを経て、
後ろ向きで俯きがちだった少年は立派に王子として成長を果たし、
今作で晴れて主役の座を掴みました、おめでとうございます。

太子として立派に成長し、エルザに対しても常に大人の対応を崩さない。
父親譲りというよりは幼少時から見守るアン・デュークの面影を感じます。
時折垣間見せる、歳相応の子供っぽさが魅力的に映るのも彼譲りかしら。
今作の主役であるクローディアスとエルザのカップルにはどことなく、
在りし日のアン・デュークとオリエッタの姿が重なるのは私だけですかねー。
作中でも様々な場面で、クローディアスにはアン・デュークが、
エルザにはオリエッタが良き先達となり善導していますし。

王族の恋というのは本人達の意識の問題や政治的な思惑、
様々な周囲の事情が絡み合って複雑な様相を呈し、
恋愛要素を含む物語の題材として文字通り王道の1つとして、
数えきれないくらいの作品が今まで生み出されてきたわけですが。
本作に於ける”王族の恋”という題材の消化の仕方は気持ちが良いものでした。
その事はアン・デュークの言葉に全てが込められています。

「君と結婚する事は確かにディアの、王子としての仕事だった。ディアは、
 今の国王の身体への負担も考慮し、この婚姻を半ば強引に進めた。
 ・・・・・・けど、君を愛することは、心に決めていたんだよ。
 順番こそ違うが、どうかお願いだ」


それはまるで懇願のようだった。

「ディアと向き合ってくれ」

その言葉に、エルザの赤い瞳が揺れる。


取りようによっては酷い言葉かも知れませんが、
例えヴィオンの捨てられた王女であろうと、毒吐き姫であろうと、
エルザの事を、エルザだからこそ愛しているんだと、そう伝える言葉。
だからクローディアスはエルザがどれだけ毒を吐こうとも、
全て受け止め、飲み込み、行動は縛るが心は縛らず、
王位継承者としての義務と夫としての務めを両立させるべく振る舞うのです。

「あたしなんて死ねばよかったのよ!
 あんたもそう!! なんであんたも生きてるのよ、
 なんで母親を食い破ってまで生まれて来たのよ!」


行き場のない怒りと屈辱をすべて、クローディアスにぶつけるように。

「死ねばいい、死ねばいいのよ。そうよ、あんたなんて死ねばいい!!」

怒りに身を焼いて、エルザは狂ったように叫び続けた。

「なんで生まれた時に死ななかったのよ!!」

クローディアスは顔を歪める。
痛みと、苦しみ、それらをすべて、
一閃のうちに振り切るように、刃をつかんだ手に力をこめた。

「――― それを、僕が自分に問わなかったと思うか。」

ゆっくりと立ち上がったクローディアスは、
窓からのぞく月を背に、壮絶なまでに、冷たく瞳を燃やしていた。

「なぜ死ななかったのか」

月の光のように、四肢の紋様を淡く光らせ、彼は言った。

「生きて答えを出してやる」

彼の姿が美しく、矮小な自分の価値を、見失ってしまいそうだった。
こんな絶望を、感じたくはなかった。死ねばよかった。心の中で囁き嘆く。
自分、だけが、死ねばよかった。

「エルザ。君は僕の妻だ。
 君が祖国でどれほど道具のように扱われていたとしても。
 この国では誰にも君を愚弄させない」


ゆっくりと、エルザの顔が上がる。
生気を失い白くなった顔で、それでも赤い瞳で、クローディアスを見た。

「君は君であるべきだ。口無しであれ、毒吐きであれ、構わない。
 決して何者の奴隷にも道具にもならず、君として立てばいい」


胸に勇気をともした異形の王子の言葉に、エルザはくしゃりと顔を歪めた。


父親からの不器用な愛情、亡き母の想い、アン・デュークやオリエッタの優しさ。
重荷になり鬱屈した思考回路の原因となっていた多くの枷が、
ミミズクと出会い、夜の王からの恩恵を経て好転し、立派な王子として成長を遂げた。
その事がまた前作「ミミズクと夜の王」の見方をより良いものへと変える様に作用し、
また、人生に俯きがちだったクローディアスが胸を張って生きる決意をした事が、
かつての彼と重なる部分が多いエルザに影響を与えて負の呪縛から解き放つ。
一連の流れが、前作と今作で1つの作品として纏まっている事が、
この読後の柄も知れぬ感銘に繋がっているのでしょう。

そもそも、私は夢男子・夢女子の素養が大いにあると自覚しておりまして、
自分の好みの男性キャラ・女性キャラと自分自身が絡んだら、
一体どういう形になるだろうと想像する事が多いです。
大概は寝る前の他愛もない妄想なのですが、時には視聴中や読書中、
目や手を止めて妄想に耽る事もよくあるので視聴速度が遅かったり。
そういう傾向があるのですが、だからと言って公式CPを否定はせず、
というか寧ろ公式の相手方には、そんな横恋慕な自分を納得させるぐらい、
素晴らしいものを見せてもらいたいという期待を抱く次第。
私が抱くキャラクターへの感情移入というのは、そういうスタンスが多いです。

まぁ長々と自分語りを入れてしまいましたが、
要するに何が言いたいかというと私は本作ではエルザが好きです。
ジョセフじゃありませんが、彼女を助けたいと思いつつ読んでました。
ただ、どう考えてもクローディアス以上に彼女の心と身体を救えたとは思えず、
またクローディアス自身の心情と決意も当然文中で語られているので、
それを以てクローディアスこそがエルザの伴侶に相応しいと認め、
だからこそエルザとクローディアスのCPを何の迷いもなく応援する、と。
そういう事を言いたいが為の、補足として先程の自分語りがあったのです。
言葉というのは不便なもので、伝えたい事のどれくらいが実際に伝わるか、
それは作中の登場人物も同じように悩む問題ではありますが、
それでも物語の登場人物たちの姿から学べることも多いかと思います。

勿論本作はそういう啓蒙的な意味合いは決して込められてはいないのでしょうが、
受け取り方は人それぞれならば、私の抱いた感想はそういうものでした。
単純にエルザとクローディアスが可愛いってのもありますけどね。
後はオリエッタの怖さと強さが前作以上に描かれていて面白かった事か。
彼女とアン・デュークの物語も同じ作者の別著として出版されていますから、
今度はそちらを読んでみての感想を書かせて頂ければと思います。

記事を書くにあたり細部を確認する為に局地的に読み返しているのですが、
駄目ですね、ちょっとした台詞1つ1つに想いが掻き立てられて涙が出てきます。
あくまで感想とは個人の主観、評価に過ぎませんが、
ただ、私がいくら読み直しても褪せる事のない感動をこの作品から受けている事、
その事はこの涙が間違いなく証明してくれている事だけはお伝えしたいと思います。
是非とも、ご一読のご検討を。

ここまでお付き合い頂きありがとうございました。


がっちの言葉戯び


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