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ミミズクと夜の王

2015.11.29(21:00) 1575

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もう買ったのは大分前になりますけれども、あれから数度読み返して、
昨夜も寝付けなくて深夜に読んで大号泣した、いつまでも心に残る名作。
個人的嗜好では続編にあたる「毒吐姫と星の石」の登場人物の方が好きですが、
作品としてはこちらの方がやはり完成度として上だなぁと思う次第。
そもそもこちらが無ければあちらも無いわけで、比較に意味はありませんが。
2冊合わせて、1つの珠玉の作品ともいうべき紅玉いづき先生の傑作です。

とまぁ、枕詞に通り一辺倒な褒め言葉を並べてみましたが、
でもまぁ別に嘘でも何でもなく本心からそう思うのでご容赦を。
詳しい作品内容はwikiを見て頂くのが早いのですが、
一応本文中にも引用させて貰って紹介してあります、予めご了承をば。
それでは宜しければ続きからご覧ください。



ストーリー
ある月の夜、ミミズクと名乗る少女が魔物の棲む森にやって来る。
彼女は自分が魔物に食べられることを望んで森へ来たが、
魔物を統べる者「夜の王」に出会い、自らを食べるよう説得するが拒否される。
それでも彼女は自身が魔物に食べられるという望みを果たすべく、
森に居座って人間を相手にしない「夜の王」の所に通うようになる。

登場人物
ミミズク
額に「332」の焼き印を押され、両手両足に鎖をつけられた少女。
三白眼の気がある焦げ茶の瞳を持っている。
やせ細っており、髪はパサパサに乾いた状態。
「夜の王」に自分を食べて欲しいと願い、彼の元に通い続ける。
村にいた頃は奴隷として働かされており、死体を扱う仕事などを任されていた。
性格は明るく、サバサバして口調はやや荒っぽく、語尾を伸ばしたりする。

夜の王
月の瞳を持つ夜の森の絶対的な支配者。
目元から頬に走る入れ墨のような複雑な紋様があり、漆黒の翼を持っている。
人間嫌いで、静かで綺麗なところを好む。

クロ
森に住む魔物で、出会ったミミズクに助言をしたり、
食料を与えたりと、色々と親身になってくれる。
クロというのはミミズクの命名で、本来の名は人間では聞き取る事が出来ない。
コウモリのような一対の羽に、2対4本の腕、さらには大きく裂けた赤い口。
時と場所に合わせてミミズクの頭に乗る程度の大きさへ小型化したりする。

ダンテス
初老に差し掛かったレッドアークの国王、灰色の髪と眼球を持つ。
自分よりも国を取る秀でた国王で、傾いていた国を建て直した。
息子を愛しているが、不器用な為に親子関係は難航中。

クローディアス・ヴァイン・ヨールデルタ・レッドアーク
レッドアークの幼き王子。
手足が薄く変色しており、生まれた時から動かす事が出来ない。
その為、塔の一室に幽閉状態にある。
出産時の負荷で母親を亡くした事、自身の四肢が動かない事を気に病み、
国王である父に引け目を感じている。

アン・デューク・マクバーレン
レッドアークの聖剣に選ばれた聖騎士。騎士団の象徴的な存在。
貴族然としておらず、物腰がやわらかである。
ダンデスとは古くからの友でチェスを打つことがある。妻には弱い。
幼少時からクローディアスを見守ってきており、彼が心を許す数少ない人物。

オリエッタ・マクバーレン
アン・デュークの妻で、神殿に務める「剣の処女」。藍色の瞳を持つ。
聖剣と共に聖騎士への供物として捧げられたが、
アン・デュークから自由を保証され、彼の家へと押し掛ける。
聡明で美しいが、気性の激しさと強さは折り紙付き。


以上、wikipediaからの引用(※多少ネタバレ防止で省略あり)でした。
引用部分の改変は本当はいけないんですけども、理由が理由なのでお許しを。
でも、結局感想を言うにはネタバレは不可避なのでどうしたものかなぁと思う次第。
この作品は中身の考察とかをつらつら挙げるよりも実際に読んで欲しいです。
電子書籍版もありますし、中身もそんなに長くないので手軽に読めるかと思います。
個人的には紙媒体の文庫を購入して読むことをお勧めしますが、
いずれにしてもまず読んで頂きたいです、騙されたと思って。
それで期待外れだったらごめんなさい、謝りますし本の代金の補填くらいはします。
というか読みたければ無料で送りつけたい気分になるくらい好き。

この作品はwikiのストーリーにもありました通り、
「死にたがりの少女と人間嫌いの魔王」のお話になります。
主人公の女の子、ミミズクの額のナンバーは奴隷の刻印かな、
果たして”332”の表記がアラビア数字なのかローマ数字なのか不明ですが、
この数字のせいで村人からは”ミミズ”と呼ばれ蔑まれていた、
いや、蔑まれていた以前に人間として認められておらず、
本人もそんな環境の中で自分自身を人間だと思わなくなり、
「人間の少女よ…」と言われると「人間じゃない、ミミズクだ」と言い返す、そんな少女。

”ミミズク”という名前は彼女が”ミミズ”という呼称を嫌いながらも、
どういう心理か完全に違う名前にするでもなく、
”ク”という一文字を加えて”ミミズク”としたものだそうです。
夜の王からは「”苦”を付け加えるとは愚かな」と皮肉を言われますが、
そんな言葉に「可愛いと幸せだし、苦しんでも幸せの方が良い」と返す、
ちょっと恍けた、しかし不思議な魅力を備えた素敵な少女でもあります。

物語の大筋は舞台設定から予測出来る通りなんですが、
この作品はその王道的な結末への収束のさせ方が上手いというか、
拡げた展開の畳み方が過不足なく違和感なく、
下手に言葉遊びや蛇足な描写を含まずに丁度すんなりと心の中で消化出来る、
絶妙な匙加減により生み出される芸術性を帯びています。

ミミズクという女の子の個性は個人的嗜好からは外れているのですが、
この物語におけるミミズクというヒロインは大好きです。
夜の王との、恋愛と言っていいのか、表現に迷う関係性、結び付きについても、
直接面と向かっての絡みなんて殆ど無いにもかかわらず、
寧ろ少ないからこそ2人の繋がりの面白さ、純粋さが強調されている様に思われます。

「微なるかな微なるかな、無形に至る。
 神なるかな神なるかな、無声に至る」


何となくそんな孫子の言葉を思い出しました。
詳細に言葉を尽くすと返って嘘臭くなる、世界観が濁る、俗っぽくなる。
言葉少ないからこそ、清らかな空気を最後まで保っていたのだと思う次第です。

で、ミミズクの相方となる夜の王について。
彼に関しての描写、設定については大概がネタバレなので置いておくとして。
取り敢えず言える事はツンデレじゃなくてツンドラだって事ですかね。
敵意剥き出しのツンじゃなくて、ミミズクに興味なさ過ぎのツン。
”人間嫌い”という表現だと少し実質からはズレている印象で、
要するに腹の中で何を考えてるんだか分からない、分かりづらい、
人間であるミミズクに対してもロクに反応を返さない困った王様です。
まぁそんな彼だからこそ、気紛れに起こすミミズクへのアクション1つ1つが、
酷く貴重で意味のあるものに思えるわけで。
その辺りも(無意識的に)計算されているんだろうなぁと思われます。

ミミズクが夜の王の為に起こす行動も、夜の王がミミズクの為に起こす行動も、
余計な言葉や感情の虚飾がない分、とても綺麗なものに感じられます。
それは後半、ミミズクを夜の王が君臨する森に攻め込み、彼女を保護し、
実の娘の様に愛情を注いでくれるアン・デュークやオリエッタとであったり、
友となり彼女への慕情を抱くクローディアスとの繋がり方と、非常に対照的なもの。
少なくとも私個人としてはそう感じました。
どちらかというと通常の物語ではアン・デューク達との繋がり方が主なんですけども。

作中の伏線の張り方も変に凝らず、物語の展開にも無理をかけず、
舌触りの滑らかさが良い後味となって、読了後に温かさを残す、そんな作品。
新品で購入しても十分お釣りがくるくらいに感動出来ますし、
分量もそんなに多くないのでサラッと読めてお薦めです。
中古で探せばそれこそ100円とかであるでしょうしね。
もしも何か心が温かくなる様な読み物をお探しでしたら、
是非ともこの「ミミズクと夜の王」を候補に加えてみてください。
きっと貴方の心に心地の良い波紋を生じさせてくれると思います。

私はこの作品を読んで何回泣きましたかね。
まぁ私は他者と比べても涙腺が弱い方なのでおお約束は出来ませんが、
そういうのを求めていらっしゃる方にもお薦めしておきます。
この方の描いた他の作品も読んでみたいと思いますので、
そちらにつきましても機会がありましたらご紹介させて頂ければと思います。
その際にも宜しければお付き合いの程、お願い致します。

ありがとうございました、では失礼します<(_ _)>

がっちの言葉戯び


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